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2016年の音楽(に、まつわるエピソード)



ぱいなっぷるくらぶ ― finderrr


20代最後の歳だったから?状況がそうしたから?つくりすぎのセリフでアンビバレンスを感じるのは冬だったからなのかもしれない。理想的にゆれるのは心だけでいいと思うし、あの時のことは今となってはよく分からないけど、分からないなりに思い返すと、記憶は案外鮮やかに残っていたりする。いずれにせよ感情の切れ味はすごくて、ペーパーナイフのつもりで遊んでいたらいつの間にか斧になっていたりするから要注意だ。ぼくは『過去は振り返らない』と心から言い切ってしまう人には一生なれない。そんなマッチョでスパルタンな精神を持ち合わせていたなら、こうして何かを書くこともしないのだし、そもそも思い出をどういうものにするのかなんて、未来の心持ちしだいでしょ。現に、すげえ情けない内容だなと思ってたこの曲も、今はわりと心地良い感傷があっていいなと思う。




Ozone ― Gigolette


年上の女性と少しの間デートしていた。誘われるがまま、全くの興味本位で。その人は33歳だった。の割には、おおよそ洗練されていないタイプの人格で、少なくともぼくとは合わなさそうな人だった。いわゆる不思議系とか、良く言えば天然ボケとか、そういうカテゴリーに属する人だった。さらに加えて、「何のきっかけもなしにどんどん熱量を上げていく人種」でもあったことが致命的だった。それに気づいてからはいよいよ本当に人が合わないなと思った。この後期アラサー女の、直近までやっていたドロドロ不倫の話、芸大を出て夢だったテキスタイルデザイナーをしていたのに男でこじれて会社を辞めた過去、決してしゃくれてはいないが少し尖ったアゴ、自称上野樹里似の天パみそじ女、職場の同僚に誘われた32歳のハロウィンでナースのコスプレをしていたらザイル系男にナンパされ人生初のクラブへ行ったこと、それら全ての話を、ぼくは淡々と聞いていた。これだけ見事に、全てのエピソードに、自分の主導権が存在しない人もいるのだな感心した。結局いい歳こいて男の転がし方も知らないジゴレットじゃないかと思った。『やっぱりデンギンのっ、ヒィッ、バァルヒトトォワァ、げっごん、で、で、で、でぎない゛ぃぃ゛のォ~~!!!(やっぱり転勤のある人とは結婚できないの)』まがい物の上野樹里が泣きながら電話して来たのは、それから少し後のことだった。いきなりのことに絶句した。たった一ヶ月の間で、彼女はぼくとの結婚を真剣に考えていたらしい。というより、彼女の中でぼくたちは、結婚を前提に付き合っているらしかった。頭の病気なのではないか。統合が失調してしまったのなら、即座に黄色い救急車を呼ぶべきだ。そう思った瞬間、あ、この人はちゃんと自分で自分のことを決められるんだな、と妙に安心したのも事実なんだけれど。




OGRE YOU ASSHOLE ― ピンホール


ぼくは他人の話を真正面から聞き過ぎるし、あなたは真反対から物事を見過ぎだ。けれども、その間を取ることは到底出来るものではないのだし、ぼくは聞いた話をそのまんま額面どおり覚えていて、いつかそんなことを言われたなと時たま思い出して用意をしておくくらいのことはする、瞬間、あなたはその逆を常に行っていて、交わることは最後までないのだとも想像する。考え方を少し変えれば、正面とその反対にいるものは同じ感覚を持っているとも言えるし、たまたま最初のポジションが逆だったというだけで、本質的なものの見方は同じだと言える。ぼくらは平行でないのであって、相対しているだけだという、そういう構造の中にいるということだ。




Herbie Hancock ― I Thought It Was You


何回催促しても我が家から全く退出する意思のない女教師に『もう泊まってったら。風呂は勝手に入っていいし、タオルこれ。あと着替えここ置いとくわ。』と言って先に寝ていた。『なぁなぁ寝てんの?』『なぁなぁ』『も~~~』と言ってるのは薄っすら聞こえていて、体を強く揺すられて起きたら、目の前に全裸の女教師がいた。次の瞬間には入っていた。否、入れられていた。ちんぽが膣に押し込まれたのだ。セックスだ。まどろみセックスというやつだ。なんなんだこの女。クソほどエロいじゃないか。もっと早く言ってくれ。つけたのか?いやそんなことはない、絶対なんにもついてない。生だ。世の中の大体の女には『先っぽだけ!お願い!』とかいう、情けないお願いをしなければならないのに、オートメーションで生だ。なんてこった。先生これはいけない。『えっ、ちょっ、これ』と思わず口に出したら、『私の勝手やん』と言う。おいおい。インモラル女教師っていうタイトルで一本撮れるじゃないかお前。がぜん燃えるじゃないか。やってやろうじゃないか。私の哲学はね、触らせていただく、舐めさせていただく、入れさせていただく、これなんです。セックスとは三つのさせていただく精神。これが私です。させていただいておるんだけども、改めて今からさせていただきます。あらためまして、はじめまして、ちんぽです。そういう気持ちである。そういう気持ちで夜が白む頃までさせていただいたわけです。はっきり言ってレイプです。私、たいへんに満足でした。ありがとうございました。以上が、黒く長い乳首を持つ先生に、犯されたいきさつです。




太平洋不知火楽団 ― サテライトからずっと


季節の高揚感に反比例するみたいに感情が死んで鬼仕事マシーンだった初夏のころ、頭がぶっ壊れそうになっていた。深夜、誰もいなくなった事務所でひとりビールを飲みながら仕事をしていた。マーケターであり、プロダクトプランナーであり、営業セクションのフォローと言う名のもとに半分セールスまでやっているのだから、当然数字を意識しなければならない。決算期までまだまだ時間はあるのだけれど、それはあくまでカレンダー的な概念であって、数字作りのための商品開発を行うには5月がスケジュールのリミットだった。数字いじりばかりしているのんきな連中は楽観的な予測ばかりを並べ立てて、今期は事業計画通りの着地であるという。そんなはずはない、と思った。現場にいれば分かる。危ない匂いがする。『仕事の効率を考えろ』などと言いながら早々と帰っていくおっさんたちの背中を見送りながら、ああもうとことんやってやろうと思った。とたんに酒量が増えた。タバコも増えた。頭はかなり冴えた。口の利き方と態度は非常に悪くなった。深夜2時、事務所のセコムをセットして退勤、コンビニでストロングゼロを買って飲みながら帰る。イヤホンからは爆音で太平洋不知火楽団が聴こえる。途中、自販機のゴミ箱に空になった缶を押し込んで歩く。自宅マンションのエレベーター、3F降りて左。ドアを開ければ即寝。そんなことが梅雨くらいまで続いた。ところで、当社の決算は終わったんだけど、やっぱり事業計画は未達に終わりました。今年のぼくには、去年と同じことはもう出来ないし、おっさんたちのことを内心『ばーか』と思っています。




Toro Y Moi ― Never Matter


クソ暑い夏の日に、涼しくなれそうな気がして、この曲ばかり聴いていた。




Talking Heads ― This Must Be The Place (Naive Melody)


実際のところ人生は向こうからやってくる。正確に言えば、人生のカタチは勝手に決まる。自らの力で積み重ねた先に決定的なものを掴み取ることが人生の醍醐味だと思っていて、またそれが人生そのものだと思っている人には残念極まりない事実だ。何かが起こることを察知したその瞬間、肩から腰にかけ大きく体をのけぞらせて様々なアクシデントを回避してきたぼくにも、回避できないことがある。たまには何かが直撃することだってある。隕石とか、彗星みたいなものである。いくつもの「不自然」が偶々重なり合って「自然」ができているのか、作為や不作為の連続が未来予測を不可能にしたのか、今となってはよく分からない。そもそもぼくらはブリには大根、納豆にはネギ、みたいな感じではなかった。なかったのだけれど、なんとなく、日々は過ぎていく。何事もなく。例えば二人とも栗ごはんがあまり好きではないのだけれど、おれは栗ごはんの塩加減最高なごはんが好きであの人は栗ごはんの蒸された栗が好きで、そういう理由であまり好きではない栗ごはんを囲うことだってある。なにも、栗ごはんそのものの好き嫌いにこだわる必要はないってことだ。とにかく、そういうことで、毎日を過ごしている。

by ahoi1999 | 2017-01-25 01:29 | 思い出 | Comments(0)

希少なものについて

初詣に出掛けて、詣でずに帰った。500人もいようかという参道の人の波が、ターンパイク状に整列配置されているのを見てウッとなり、いそいそと帰路についたのである。せっかく淀川を越えて大阪中心部まで出てきたというのに、巨大ネックレスジャージスキンヘッド夫と厳寒ミニスカババア妻、そしてそこらじゅう走り回る金髪のガキという組み合わせの珍家族が初詣に出掛ける後ろ姿を見送って終わりである。この家族は登場感がすごかった。げんなりとした気持ちの道中、なんとなく路面に突き出た看板へ目をやると、「和牛希少部位専門店」と記されてあった。「和牛希少部位専門店」である。いったい、和牛の希少部位とは、どんなものなのだろうか。能書きには、「グルメな方 和牛肉の旨さを味わえます!! 希少部位全て」とある。牛の、希少な部位。例えば、フィレ肉。あるいはその希少なフィレ肉のさらに希少な部位とされる、シャトーブリアン。そういうことなのだろうか。そういうことであれば、和牛でなくても良いのではないか。和牛を推したいのか、希少部位を推したいのか、そのどちらもなのか、いやきっと店主に聞けば「どっちも推しです」と言うのだろうが、結局のところ、ただの牛ではない和牛、その希少部位専門店、つまり希少に希少を重ねた希少の極北にいる肉を食わせてくれる、そういうことなのだろうか。



もやもやした気持ちで地下鉄に乗る。最寄り駅近くのスーパーに寄る。肉売場の前を通り過ぎようとすると、大きなPOPが目に飛び込んできた。そこには、「脂身が少なく、ヘルシー。希少部位ランプ。」とあった。希少なランプ肉。つまり牛畜生のケツ肉である。ランプ肉にはミディアムでもナイフを入れにくい固くて安い肉というバッドイメージしかない。だいたいが、牛畜生のケツ肉なのである。そんなものがうまいはずないじゃないか。高校生の時から大学卒業までステーキハウスでバイトしていたぼくが言うのだから間違いない。ありがたがって、なにが希少部位だ。噴飯ものである。バイト先の店がハンキングテンダーをステーキ状に大きくカットして「ハラミステーキ」と称して売り出した時以来の衝撃(ミートショック)だ。ハラミっていうかサガリだし、横隔膜近辺の肉は何より臭い。そして仕入れ値が安い。これも希少部位云々と銘打っていたような記憶がある。



肉屋やスーパーが言う希少部位とは、本当に、「少なく希な部位」の字義そのままなのである。肩ロースとバラ肉以外はすべて希少部位と言えてしまうことになる。ここには、「まれでありがたいことがたくさんある」状態が至高とされる、奇妙な価値観が存在している。普通に考えて、まれなものというのは、そんなに多くあるはずがない。まれなものがたくさんあれば、それは日常になってしまう。それなのに、「まれでありがたいことがたくさんある」が至高とされる世界を多くの人が望んでいる。誰にでも、大切にしている素敵な思い出とか、出来事とか、出会いとか、そういうものがあると思うけど、毎日毎日あるわけじゃない。相反することを求めるあまり、価値観が歪んで噴き出したその一端が、「肉の部位のうち、ほとんど全部が希少部位に当たってしまうんじゃないか問題」だったという訳なのだろうか。



しかしこんなのはもはや、ないものねだりの具現化じゃないか。こんなこと、してはいけない。ないものねだりを具現化した人の末路はみんな悲惨だからだ。キラのカードばっかり持ってる金満の子。ウェルチが無限に出てくる家の肥満児。呼べばすぐ来る女。ワリカンしたのに「全額記載の領収証くれ」という脱税自営業者。ないものをねだったが最後、全員不幸になっとるやないか。キラのカードばっかり持ってる奴は20年後すっかり根気強さが無くなってしもうてニートや。ウェルチ無制限の肥満児は高校中退してコンビニの深夜バイトや。当然童貞や。呼べばすぐ来る女。お前は色々とありがとうございました。ぜんぶ経費にしてた自営業者は追徴課税受けとったわ。全員アホばっかりやんけ。見てみい。



「世の中にほんの少ししか存在しないものを、両手からこぼれてもなお欲しがる人間の浅ましさ」みたいなのって、人間の本質的な業だと思う。みんなこの先きっとなんにも変わらないまま、気付かないまま、ないものねだりを繰り返して行くのかもしれない。ぼくは30歳を迎えていよいよ頭髪の薄さに気を取られてきたのだが、ヅラをかぶろうとは決して思わない。ヅラは、ないものねだりの具現化の最たるものであるし、姉歯一級建築士の例をみるまでもなく、その末路はとても悲しい。「なんらかの救いを与えうるものがあるとすれば、それはとらわれぬことと気を使わないことだけであろう。」とヒュームも言っている。




by ahoi1999 | 2017-01-05 02:22 | 生活 | Comments(0)

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