感性の話

母のカレーはとても甘い。使うルーがもっぱら甘口であるし、玉ねぎの量も多い。従ってドロドロである。家のカレーの味と学校給食のカレーの味が共に甘かったせいで、小学校の時はカレーは甘いものであるという認識だった。必然ぼくのカレーも甘くなるし、甘いカレーが好きだ。ところで、家伝のカレーはもともと辛かったらしい。おそらく戦後になって曾祖母が料理本を見ながら作ったカレーが辛かった。その頃には祖母、つまり母の母(新興宗教にどっぷり浸かって失踪という人間パンクの体現者)は蒸発していたから、母の味は基本的に曾祖母の味、明治の女の料理である。甘くなったきっかけは嫁に言った先で叱責を受けたからだそうで、いわく『アンタのおばあちゃんがな、こんな辛いもん食えるかー!言うから、甘くしてん』とのこと。離婚して家を出てから25年以上になるが、今やおかしなことに母は辛いカレーが食べられなくなっている。『わたし辛いのアカンねん』と言うのだが、ではなぜ辛いカレーを作ったのか。謎は深まるばかりだ。


ところで、最近とても素直な人が増えたように思う。他人を信用しすぎる人とか、額面どおりに受け取る人とか、とにかく言われたりされたりすることに対して何も考えないですっかり受け容れる。見方を変えればアホの子、足らない子、何事も考えないでおく人、ということになるけど、あくまでそれはぼくの感じ方がそうだと言うだけのことである。どちらも悪いことだとは思わない。ましてや猜疑心を持てということでもない。ただ、「素直な人たち」はその素直さを他人に求めることだけは止めて欲しい。素直さの共有を促し、あるいは強制してくる「素直な人たち」もまた、たいへん多いのである。自分の感性が全人類の感性であると信じて疑わないところがとても素直だと思う。ぼくは「素直な人たち」が言うことに対して偽りの共感で応じる。面倒だからだ。ああなんでこんな足らない奴の感想に『ホンマな~』とか言わないといけないのか。いずれにしろ、ピュアとナチュラルとアホは方向性がみな同じだ。
(でも仮に、偽りの同調をするぼくみたいな人間が「素直な人たち」の半分くらいを構成しているとしたら、それは本物の狂気だ)


逆に、世の中には自分本位の感想を述べられるものが少ないように感じる。例えば、テーマパークは来場者に楽しさを強制する。なぜならテーマパークは来場者に楽しさを提供する場だからだ。ディズニーとかUSJは洗練されつくした、楽しさの極致である。テーマパークは語りかける。どうや楽しいやろうと。客は答える。ハイ楽しいですと。また、24時間テレビは感動を強制する。なぜなら24時間テレビは視聴者に感動を提供する番組だからだ。何もかも感動である。出演者の身振り手振りや、呼吸の一挙手一投足が感動そのものである。24時間テレビは語りかける。どうや感動するやろうと。視聴者は答える。ハイ感動しましたと。他にも「泣ける映画」や「癒しの音楽」など、感性的なテーマを掲げるものは漏れなく「送り手が受け手の受け取り方を指定する」構造を持つ。『最高ですか?』『最高です』の関係である。つまり押し売りつつ押し売られるの構造なのである。ぼくには信じられないことなのだが、この構造をそのまま受け容れる人は一定数存在している。存在しなければそもそも商売として成り立っていない。送り手と受け手の共犯の両輪でお互いがとても気持ち良くなるという、とても気持ちの悪い構造が存在していて、それはごくごく一般的なことであるという世間の認識が後押しとしてある。フォーディズム的なありとあらゆるものは完全崩壊したと言われるけれども、案外ここ日本ではそうでもない。品が変わっただけで、根本的には何も変わってはいない。せめてドリカムが言うとおり嬉しい楽しい大スキくらいは受け手本位で発露してもらいたい。感性をオルグされていてはどうしようもないのだ。


最近寒くなってきて、空気が乾燥している。乾燥しているから、なんでも乾かしたくなる。洗濯物の話をしているのではない。ずる剥いた亀頭の話をしている。ぼくは生粋の包茎なので、あわよくばずる剥けになったりしないかなと淡い期待をする。剥くのである。干すのである。亀頭の部屋干しをしている。包茎諸君には、訳が分からないとは言わせない。外気に触れた亀頭のことを知らないとは言わせない。覚えがあるだろう、家に帰り、部屋で全裸になり、なんとなくちんこの皮を剥くという行為に。最初は本当にこの通り、なんとなく剥いたのである。それがそのまま乾燥した冬の大気に触れ、なんとなくそのままにする。それだけである。なんとなくなんでも乾かしたくなるのが冬なのだ。ずる剥けで放置していると気分が高揚してくるから不思議である。古本の日干しのようなものである。不思議な高揚感があるので、常時ずる剥けの人はいつもこんな高揚感で満たされているのかと思う。性豪は大抵ずる剥けであるという定説を信じる。みんなも一度やってみて欲しい。この冬のぼくの楽しみは今のところたったそれだけである。シンプルで良い。物事をどんどんシンプルに考えて生き方もシンプルにした方がいいみたいなことを言う人がいるけど、この冬はあんたよりおれのほうがシンプルに生きてるって言いたい。




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by ahoi1999 | 2015-11-14 02:53 | 生活 | Comments(0)


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