道路沿いの家

暑いので窓を開け放っているといろんな奇声を受信できる。さっきなんかは「アーヒャッ!ウヒッハッハ!!(ブロロロ…)」という音を聞いた。先日は、「ウォォェェエレアーレイェオアァ!!」などの奇声を唐突に浴び、失笑を禁じえなかった。ぜひ声に出して読んで頂きたい。ぼくはしている。声ならぬ声がいちばんエモーショナルに心まで打ち響く。鬨の声なのである。ただここで留意しておかなくてはいけないことは、奇声を発していると思しきご当人は、奇声を発していると思っていないというパラドクスだ。彼らにしてみれば、ただの笑い声であるし、気持ちよくチャリをこぎながら歌を歌っている、というだけのことなのである。ぼくのような人間から頭が足りていないと思われた挙句、ふとした瞬間の情けない声まで真似されている事実を知れば、とても不本意な気持ちになるだろう。ぼくがやっていることは産経写真部がよくやる瞬間トリミングの手法なのだ。例えば、意地でも美の中に醜を見つけて、「ほうら、お前だってこんなになってるじゃないか」と迫るのである。つまり変質者の手法である。ぼくは社会人になってから背骨がS字に曲がっていると医者に宣告された。体が曲がると心も曲がる。字が汚い奴は心も汚い。昭和の教育は間違っていなかった。

今でも鮮明に思い出せる出来事がある。保育園の年長さんだった頃、園内でサッカーごっこをやっていた。ぼくはゴールキーパー。当然、キーパーなので派手な動きは無い。ゴールに見立てた壁の前でじっとボールを待つ。その様子を見ていた保母さんが、年少の子を腕に抱えながらこう言った。「お兄ちゃん何してはるんやろな~~全然動かはらへんな~~フフッ。おかしいな~~フフッ。」瞬間トリミングとは、こういうことなのである。彼女からすればぼくは、サッカーごっこをしているのではなく、ただ立っている人なのである。ぼくは5歳にして、分かってもらえない悲しさと、分かってもらうことの重要さを理解した。

その点、フェイスブックの「友達ではありませんか?」は、とても迷惑な機能だ。忘れ去りたい過去は人間いくつかあるもので、アルバムの断片を寄せ集めたようなSNSには恐怖しか感じない。ぼくはまず嫌いな上司をブロックする。よき部下であるために。出会って1時間でペッティングしただけの女もブロックしよう。性欲の塊だったとしておいたほうが都合の良い場合もある。高2の時に振られた先輩も同様である。トリミングしたイメージだけで、ぼくを語って欲しい人もいる。

小さい頃、団地に住んでいた。公団住宅である。6階建ての集合住宅が全部で19棟あったその広大な敷地内で、つつじの花をくわえ蜜を吸いながらブラブラしたり、小銭を拾い歩いて自販機のジュースを買ったり、白い野良犬をからかってかかとを噛まれるなどして楽しく暮らしていた。団地と言う独特のシチュエーションがそうさせるのか、変わった人も多かった。夏になるとやたらトコロテンを食べろと勧めてくる鼻毛むきだしの好々爺や、毎夜ニンニクを焼いて異臭騒ぎを起こす老婆など実に多彩であった。中でも、小学生にしてちんこの皮がずる剥けだった小汚い友人がいたのだが、ぼくの中で彼はヒーローだった。ときたま、投棄されたエロ本を収集して鑑賞会を催すのだが、描かれたちんこと自分のちんこを見比べると全く違うのである。当時のぼくのちんこはミニひょうたんぽい形であり、それは今も変わらない。悲しいけれど、被っているのである。百姓のほっかむりである。しかし彼は違った。エロ本そのままなのである。まさしくペニスであった。フロイト流に言えば、父性の象徴である。フェイスブックによると、彼は今、1児の父である。

ちっさいオッサンである私は、一般成人男性と同じ脚のストロークでは並走できず引き離されてしまうことが多々あり、歩数で補おうとたいへん忙しく歩いている。通勤するときなどは、急ぐあまりちっさいオッサンがじたばたしている風にしか見えない。会社の300メートル手前ぐらいまでじたばた歩を進めていると、先輩や後輩に出会うことがよくある。ぼくはこれがとても嫌で、とにかく気付いていないことにする。目が合えば伏せるし、信号では真後ろに立つ。死角に入ろうと必死なのである。学生の時もそうだった。じたばたしながら、ピタリと背後につく。動かざること山の如しである。前世は変質者なのかもしれない。カルマの業を感じる。しかしこれだけ言っておいて勝手なのだが、帰りはとても気が大きくなり、先輩や後輩を無表情で追い抜かしたりして帰る。あっ、とも言わせない。疾きこと風の如くである。会社には無愛想で能面のような顔をした事務員さんがいるのだが、帰りのエレベーターで一緒になれば、ぼくも能面のような顔で会釈できるほど余裕がある。形態模写である。自分にはサイコパスの素質があります。

とにかくぼくは、家に帰れるという状態がとても気に入っている。この文章を書き終えようとしている今、外では暴走族がほんまもんの黒塗りセダンに追い回されている様子で、さっきから我が家の周囲を何周もしている。クラクションと罵声にこの近辺の民度の低さを噛み締めながら、ちびくろサンボを思い起こした。木の周りを周回するトラがバターになって、そのバターでもって食べたパンケーキの枚数を競うというクレイジーな話だ。今となってはまともに読めない内容の話ではあるが、幼いぼくは神妙な顔で読み聞かせてもらっていた。成長とは一体なんなのかを考えさせられる。



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by ahoi1999 | 2014-06-10 02:52 | 生活 | Comments(0)


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